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~第一章「誕生」~

 キリマンジャロの麓、朝靄に包まれた大地に、二匹の小さな命が震えていた。ここ最近、山頂は深い雲に覆われ、雷鳴が轟き渡っていた。キリマンジャロに住まう神々が怒りを露わにしているのではないか──そう囁くチャガの民の間に、不安が広がっていた。

 その朝、静寂を破るかのように、か細い鳴き声が響いた。チャガの狩人のひとりが足を止め、耳を澄ませる。声の主を探し、霧の中を進むと、そこにいたのは二匹の小さな子犬だった。まだ生まれたばかりのようで、体は細く、震えている。男の子の子犬は、山のふもとに佇むように佇み、女の子の子犬は蘭の下で身を寄せていた。

 拾い上げたものの、男は躊躇した。彼らの親が近くで探しているのではないか。あるいは、神々が遣わした特別な存在なのではないか──。

 村へ連れ帰るべきか、ここへ置いていくべきか。仲間を呼び寄せ、彼は相談する。村の長老は深く考え込み、静かに口を開いた。

「この子らを見捨てることはできん。しかし、神々の遣いであれば、我らが勝手に育ててよいものか……」

 沈黙の中、再び稲妻が空を裂いた。その瞬間、長老は何かを悟ったかのように頷き、言った。

「この子らを神の御使いと信じ、大切に育てよう」

 こうして、男の子の子犬は偉大なる山の名にあやかり「マンジャロ」と名付けられ、女の子の子犬はひっそりと咲く蘭の下で見つかったことから「ランカ」と呼ばれることとなった。

 キリマンジャロは太古より神々の住まう地と語り継がれてきた。その神聖な地で拾われた二匹は、神の遣い、すなわち神(GOD)の犬(DOG)として大切に育てられた。チャガの村人たちの温かな手の中で、マンジャロとランカはすくすくと成長していった。

 ランカは活発で、いつも村の子どもたちと駆け回っていた。負けず嫌いな性格ゆえ、どんな遊びでも決して引かず、木登りにまで挑戦しようとするほどだった。一方、マンジャロはのんびりと昼寝をするのが好きで、日なたでころころと転がりながら、うたた寝をする姿がよく見られた。

 そんな二匹のもとに、チャガの村で飼われていた二匹の猫、ココペリとチムニーが現れた。チムニーは最初こそ警戒したものの、マンジャロとランカの無邪気さにすぐに心を開き、一緒に遊ぶようになった。しかし、ココペリは違った。警戒心が強く、二匹には決して近づこうとしない。チムニーが親しくする姿に苛立ち、むしろ二匹を遠ざけるようになっていった。

 ある日、ココペリとチムニーは村を抜け出し、森へ遊びに出かけた。それを見ていたランカは、マンジャロを誘い、二匹の後を追うことにした。

「少しでもココペリと仲良くなれたらいいんだけど……」

 マンジャロは特に気にしていなかったが、ランカは自分たちが嫌われていることを分かっていた。それでも諦めず、ココペリとの距離を縮めようとしていた。

 しかし、後を追われていることに気づいたココペリは、チムニーを促してさらに森の奥へと駆けていく。

「ランカ、急ぎすぎると転ぶよ……」

 マンジャロの心配をよそに、ランカは必死で走る。しかし、途中で二匹の姿を見失ってしまった。

「仕方ないね。帰ろうか」

 そう言いかけたそのとき──

「ぎゃっ!」

 突如、森の奥からチムニーの悲鳴が響いた。

 ランカとマンジャロは驚いて駆け出した。そこには、足をばたつかせながら罠にかかったチムニーの姿があった。何者かが仕掛けた落とし穴の中で、チムニーは必死にもがいていた。

「チムニー!」

 ココペリが必死に助けようとしていたが、一匹の力ではどうにもならなかった。そこへ、マンジャロとランカが駆けつける。

「大丈夫! 今助けるから!」

 ランカが勢いよく駆け寄り、マンジャロもおっとりした様子ながらチムニーを引き上げる準備をする。

 三匹が力を合わせ、なんとかチムニーを救い出すと、安堵のあまり皆泣きながら抱き合った。ココペリは少し照れくさそうに「ありがとう」と呟く。

「これからも仲良くしようね!」

 ランカが嬉しそうに言い、ココペリも頷いた。

 それからの毎日は幸せそのものだった。四匹で様々ないたずらをし、マンジャロだけが捕まって怒られる姿に皆で笑った。異なる部族の犬と喧嘩しながらも友達になり、楽しい時間を過ごした。

 しかし、そんな穏やかな日々の中で、マンジャロとランカの心には次第に大きくなる疑問があった。

「私たちの親はどこにいるのだろう?」

 夜空を見上げ、月の光を浴びながら、二匹は考え続けた。そして、ある夜、決意が固まった。

「探しに行こう」

 ココペリとチムニーも共に行くと言い張ったが、ランカはそれを強く否定した。危険な旅になること、優しいチャガの民をこれ以上悲しませるわけにはいかないことを説得し、マンジャロとランカだけで旅立つことを決めた。

 それが、長く壮大な冒険の始まりであるとも知らずに──。

☆第一章主要登場キャラクター☆

Manjaro (まんじゃろ) 犬

性 別  : オス♂
生年月日 : 不明(ふめい)
特 徴  : 温厚でやさしい
       ドジでおっちょこちょい
       臆病
       のんびり屋さん
       寝る事大好き
       強運という不思議な力をもつ

Ranka (らんか) 犬

性 別  : メス♀
生年月日 : 不明(ふめい)
特 徴  : 天真爛漫
       負けず嫌い
       猪突猛進
       曲がった事が大嫌い
       好奇心旺盛
       思いやりがある
       強靭という不思議な力をもつ

Kokopeli (ここぺり) 猫

性 別  : メス♀
生年月日 : 不明(ふめい)
特 徴  : 知的
       戦略家
       危機察知能力ピカイチ
       食にうるさい
       他人を信用しない
       俊敏

Chimney (ちむにー) 猫

性 別  : メス♀っぽいオス♂
生年月日 : 不明(ふめい)
特 徴  : マイペース
       人懐っこい
       泣き虫
       すぐ信用する
       鈍感
       怪力