第六章「再誕の欠片」 – Fragments of Rebirth
天を裂く光と轟音。
マンジャロの背に神の紋章が浮かび上がった瞬間、空は深紅に染まり、天地が悲鳴を上げるように揺れた。
「な、何だこの空……!?」
ヴェルが叫び、ホークが即座に上空を睨む。
「……あの渦……ただ事じゃない」
巨大な空の裂け目が、まるで“門”のように形を変え、ゆっくりと開き始める。
その中から覗くのは——白銀に染まった、まったく別の世界。
「天界……」
ココペリが、押し殺すような声で呟いた。
「ランカは……あそこにいる」
マンジャロの声は震えていたが、迷いはなかった。
その背に浮かぶ神の紋章は、淡く輝きながらも、不安定に揺れている。
その時——
マンジャロのネックレスが一際強く光り、地面に古代の文様が浮かび上がった。
「これは……チャガの封印だ」
ホークが目を細めた。
文様の中心から、ゆっくりと階段が現れる。空へと続く、光の階段。
「行けってことか……!」
チムニーが目を見開くが、次の瞬間——
階段はぐらつき、光が不安定に揺れたかと思うと、音もなく崩れ、霧のように消えてしまった。
「な、なんや今の……」
「階段が……消えた……?」
マンジャロは崩れ落ちそうになる膝を必死に支えた。
全身に残る傷、魂を削られたかのような疲労。
「……今の俺には……まだ“力”が足りない……」
「神の紋章は目覚めかけてる。でも完全じゃない」
ホークが冷静に分析する。
「力を取り戻さなあかんってことやな」
チムニーが拳を握る。
「無理に突っ込んでも、返り討ちにされるだけや」
ココペリの言葉に、全員が黙り込む。
「じゃあ何をすればいい?待つだけじゃダメだろ!」
ヴェルが焦りながら叫ぶ。
「……ランカを助けるには、俺が“本当の自分”を取り戻さなきゃいけない」
マンジャロが静かに言った。
「本当の自分……?」
「俺たちは記憶を封印されてる。力も心も全部……」
「なら、まずはその記憶と力を取り戻す旅に出るべきやな」
ココペリが立ち上がり、マンジャロに手を差し伸べた。
「道のりは険しいけど、うちらは一人ちゃう。絶対に行けるで」
チムニーが微笑む。
「全員そろって、初めてあの空に挑めるんだ」
ホークが空を見上げる。
「……まずは休もうぜ。体ボロボロのままじゃ、何も始まんねぇしな」
ヴェルが草の上に寝転がる。
「そうやな……回復と、準備。それが今の最優先や」
空の裂け目は、ゆっくりと閉じかけていた。
まるで、試練の時を待つかのように。
「待ってろよ、ランカ……必ず迎えに行く」
マンジャロの瞳には、再び燃える決意の光が灯っていた。
ーー第七章へ続く。